Jul 02, 2005

初めての日本平(4)~道中すったかたん後編

現在13時。見たい試合は15時半のキックオフ。端から見れば、余裕よ、よ・ゆ・うとは済まされない。
今、昼食を食べようと道の駅へ向かうも空腹のせいで判断を誤ってしまった。堂々巡りの2人。
そんなときこそ人間力。ではなく。冷静さ。
それに気付いた大場さんは空き駐車場を見つけ、あのうるさいカーナビをバックモードにして後ろに下がる。あのカーナビはバックの時は後ろを写してくれる便利なものだった。何事も欠点と利点があるものなのだ。大場さんはうまくバックしてもとの道に戻った。

道の駅。2人は障害者駐車場に堂々と停まって食事を始めた。
大場さんは「いやぁ、ぼくは一つから食べたい方だから。」とのっちが差し出したチーズバーガーにかぶりついた。続いてシェイクサラダ。のっちがドレッシングをかけてふってから大場さんに差し出す。
そして、コーヒー。大場さんはびっくりした表情になった。
「あー、店員さんストロー入れるの忘れている!」
大場さんはふたの円周に小さな穴を開けてそこからぐいぐい飲んだ。
大場さん完食。そして食後のタバコ。
そしてまた日本平に向かって走り出す。またとりとめのない話が続く。

「のっちちゃん、ぼくのカバンから封筒出して。」
これだな。株式会社エスパルスっての。のっちは封筒を開けた。中からはあいさつ文と駐車証が出てきた。
駐車証の裏には日本平スタジアムの行き方が書いてあった。地図による経路設定、注意書きの道路が狭い箇所があります。はのっちを不安がらせた。お前が運転するわけじゃないのに。

静岡市到着、エスパルスドリームプラザを超えて、いよいよ日本平への道のクライマックス。日本平へ向かう坂道には「サッカー応援します ○○テレビ」と書かれた電信柱が道案内するかのように並んでいる。そこを徒歩で歩くサポーターの集団。のっちはただそれだけで優越感を感じていた。坂を上り、ついに日本平スタジアムVIP用入り口に到着。そこで、オレンジ色のジャンパーを着たお兄さんに呼び止められる。
「のっちちゃん、ちょっと車を出て!」
大場さんから言われてのっちは助手席から出た。大場さんはのっちの真後ろに合った車椅子を取り出し、板とクッションも出した。運転席の隣りに車椅子。座席にクッションを置いた。そして、移動用として板を運転席と車椅子を繋ぐ。大場さんは手だけで板を這って車椅子に乗った。

大場さんが居なくなった車はそのまま放置されるわけではない。さっきのオレンジ色のジャンパーのお兄さんが大場さんの代わりに乗り込んで駐車場まで止めてもらう。
「福祉車両運転するのは初めてなんですよ、うわー、ハンドル軽いなぁ」
と休日出勤のお兄さんがぽつり。

駐車場と言っても山野の空き地を使っているだけの駐車場。何か言いたかったがのっちはぐいとその気持ちを押し込んだ。そこには静岡のマスコミの車が大集合していた。わぁい!中身はどんなかなぁと見てみようとしたが、ひとりではないんだ。とあきらめた。

車の鍵を閉めたのっちは大場さんがいる入り口へ戻り、2人でスタジアムに入っていった。

いよいよスタジアム内部の話に移るわけである。

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Jun 30, 2005

初めての日本平(3)~道中すったかたん前編

6月25日11時半前。東海道線○○駅。

のっちは駅を降り、大場さんを待った。「約束では12時だけど大丈夫かなぁ」
駅の周りには売店があっても立ち読みできるようなコンビニは無い。仕方ないので周辺の探索をしていた。そのうち駐車場に銀のワゴンが停まった。大場さんの車だ!
のっちはその車に立ち寄った。やっぱり大場さんだった。よし、乗ろう。助手席をみた。クッション2枚。板1枚。
「ああ、のっちちゃん、それは後ろにほおり投げてもいいからね」とクッションと板を後部座席に押し込んだ。
後部座席には折りたたまれた車椅子が置かれていた。

「のっちちゃん、お願いがあるんだけど。」は、はぁ?
「ぼくのかばんからライターとタバコを出してくれない?」おずおずとのっちは助手席からタバコとライターを差し出した。大場さんはライターを両手逆方向に動かしながら火をつけようとする、つけようと。つかない。
「のっちちゃん、ライターと、ついでにタバコ買って来て!!」
のっちはライターとタバコを買いに走った。手には大場さんの財布を持って。
戻った後、大場さんはタバコに火をつけゆっくりと吸い始めた。

吸い終わった後、大場さんは車のエンジンをかけた。中島美嘉の曲がかかる中、二人は清水の日本平へ向かった。大場さんは手のみでハンドル(旋回用取っ手つき)とアクセル、ギアを難なく動かす。ペーパードライバーののっちにはまず真似できない。それどころか、音楽にのってしまって見境がつかなくなる。なんにせよ車の運転ができる男性はすごいよな~。少し惚れ惚れ。

「いやあ、障害者歴が健常者歴を越えちゃって~」と大場さんは笑った。車の運転技術を教わったのは頚椎損傷の後。「ついでに頚損の悪いお友達からタバコもお酒も教わっちゃって。ひゃっひゃっひゃ」と笑った。そんな取り留めない話ばかりしていた2人をさえぎったのはカーナビの音声だった。

「あー、設定ミスった!!」
どうやら2人を高速道路のほうへ招きいれようとしている。国道1号線で向かおうとしているのに、別の道を紹介したり、「戻ってください!」を連発しながら、どうしてもカーナビは高速道路に向かわせようとしている。
「のっちちゃん、ぼくが設定方法を説明するからやって!!」
大場さんは車を動かしながらだったせいか、のっちもあせっていたせいか、設定を直すのは不可能だった。

そんなカーナビを無視してのっちたちはお昼の心配を始めた。
「ここをまっすぐ行くと、マクドナルドがあります。その先には道の駅があります。それを逃すと食べられません。どうする?」
「それじゃあ、口じゃんけんできめましょうよ。大場さんが勝ったらマック。わたしが勝ったら道の駅で調達。せーのっ、じゃーんけん」
「チョキ」「パー」
「チョキ」は大場さんの口だった。マックに決定。早速ドライブスルーにならぶ。大場さんはワゴンに関わらずするすると角を曲がった。すごい!と思ったとき、もう一つの入り口から入ってきたジープに先を越された。ちょっとショック。
「いらっしゃいませ。こちらがメニューです」とマックの店員がメニュー表を渡した。
2人ともどれにしようかなー。と迷った。決めた。
大場さん。ダブルチーズバーガーのバリューセット(内訳、ダブルチーズバーガー、ガーデンサラダ、アイスカフェ)。
のっち。てりやきチキンフィレオのバリューセット(内訳、てりやきチキンフィレオ、ポテト、野菜ジュース)
どっちも500円。2人の財布の中にはそろって500円が入っていた。それをレジコーナーで差し出そうと思った。

「1000円になりまーす!」2枚の500円玉を指しだし、バリューセットを受け取った。
「んじゃあ、道の駅へ行こうか」と車を走らせた。しばらくして左折。その時二人は「!」と思った。
「ああ、曲がる路を間違えた!!」
右往左往する2人。果たして、無事日本平に着くのだろうか?の前にお昼のバリューセットの心配だ。

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Jun 29, 2005

初めての日本平(2)~出会い

数日後、のっちは同僚立会いのもと、「知り合い」に会う事になった。車椅子に乗ったメガネのおじさん。
「のっち、彼は大場さん、パソコンの先生!」
大場さんは同僚の部屋の机の端っこでたばこをじゃんじゃん吸っていた。頚椎損傷者がこんなに吸って大丈夫かよ。と言うぐらい。

「こちらが、のっちさん。大場さーん、俺的に結構扱い厳しい子なんですがよろしくお願いします」

大場さんはのっちを快く引き受けてくれた。
で、観戦対象試合は6月25日のプレシーズンマッチ。
「清水エスパルスVSジュビロ磐田」in日本平スタジアム
それをのっちが大場さんに告げると、大場さんは早速携帯を取り出し、不自由な手でうち始めた。
「ああ、もしもし大場です」
どうやらエスパルス関連の知り合いに電話しているようだ。数分後電話を切った。どうやらOKらしい。
「のっちさん、頼みがあります。このゲームのチケットの自由席を買ってきてもらえませんか?その分、わたしが払いますので。」

数日後、のっちはローソンの券売機でチケットを取ってきた。
「大場さん、チケット買って来たよ~!」とのっちはその分のお金を大場さんから受け取った。直後、大場さんは
「あ、のっちさん、のっちさんの分はどうしたの?」
えっ、聞いてませんでした。しょうがないので、のっちはまたローソンに行く羽目になった。

大場さんのチケットと、のっちのチケット。2つ揃った。後は6月25日を待つだけだ。
「のっちさん、25日はお昼に○○駅でお会いしましょうね!」

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Jun 28, 2005

初めての日本平(1)~プロローグ

2005年4月2日、土曜日。

のっちが福岡を出た日。静岡までは5時間以上も移動しなければならない。ふと頭をよぎった。
「うーむ。福岡を出るというわけでだ、スポーツ観戦と行こうか。」
まず、プロ野球。
我が福岡のソフトバンクホークス。千葉。
んじゃあ広島のカープは?巨人戦のため東京ドーム。
頭を変えて中日。デーゲームじゃないんだ・・。

ん?デーゲーム?それならサッカー路線に変更。
静岡に赴任するなら、おわっ。これがいいや。と検索、検索。
どっひゃー!!

清水エスパルスVSジュビロ磐田
静岡エコパスタジアム 15時キックオフ

まさにのっち様ようこそ!と思われるマッチミーティングじゃないか。
エコパスタジアムってどこよ、どこよ・・・・と検索を掛けた。
うう、新幹線で行けるぞ。よし、決めた。
と、のっちはホテルを出るなりコンビニに立ち寄ってチケットを買い、新幹線に飛び乗った。

数時間後、エコパもよりの掛川駅に到着。1時間後にエコパスタジアム行きのシャトルバスへ。明らかにエスパルスとジュビロのサポーターと思われる人々と一緒。エコパに降りたのっちは場違いな雰囲気を感じ取ったせいか、きょろきょろしながらスタジアムの本体に向かった。

入場時にもらったカードは「23 福西崇史」。サッカーに疎くなっていた自分はああ、この人まだ生きているんだぐらいしか思わず、ポケットに突っ込んだ。もちろん、スターティングメンバーの発表の時に聞いた名前の中にもジュビロもエスパルスにも知っているのがちらほらあった。まだ現役かい。すごいな。と思ってるうちに試合開始。

エスパルスがセットプレーで1点先取。エスパルス側は喜んでいたが、のっちは少しむなしさを感じた。そういう得点方法しかできないのかなぁ。とちょっぴり憂鬱になりながら後半に突入。後半も終わりの兆しが見え始めたそのとき、ぐちゃぐちゃ固まっていたジュビロ側ゴールで誰かがゴールを決めた。誰だ!?

「得点 22 カレン・ロバート(顔写真付)」

電光板はそう示していた。よし、これも縁だ。カレン君と一緒にジュビロを応援していこうじゃないか。

その後、ジュビロの試合にも足を運ぶようになったのっちに、職場の同僚がこんなことを持ちかけて来た。
「なあ、ジュビロの試合がそんなに見たいのなら、うちの知り合いと見に行ってみないか?」
のっちは知り合いに会う前にうん。と言ってしまった。

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